5
それからしばらくして、またエミが熱を出しました。
さむい夜のことです。
園長先生と女の先生が、ろうかでエミのにゅういんのはなしをしています。
「こんなさむいところにいるよりも、びょういんのあたたかいベッドのほうがいいと思うんだけどなあ」
「ええ、そのほうがエミちゃんも早くよくなると思いますわ」
あきらがふたりの話を立ちぎきしていると、だれかがかたをたたきます。ふりかえると、それはりょうりのおばあさんでした。
「エミちゃんがしんぱいなんじゃね。あのスープさえ作れたら、妹さんも早く元気になるのにねぇ」
「あのスープって?」
あきらはたずねました。
すると、おばあさんはかぜによくきくスープのことを話してくれました。
でもざいりょうを手にいれるのがむずかしくて、なかなか作れないそうです。
あきらはざいりょうを手にいれたら、そのスープを作ってもらえるよう、おばあさんにやくそくしてもらいました。
あきらはつぎの日の夜明け前に、こっそりとしせつをぬけだして、スープのざいりょうをさがしに出かけました。
しせつのにわをぬけようとしたとき、とつぜん雪だるまがむっくりと立ち上がって、あきらのほうへ歩いてきました。
あきらはびっくりして、目をまるくしました。
「どこへ行くんだい?」
雪だるまはそばまでくると、そうたずねました。
『なるほど、これがスノーマンってやつか』
あきらはけい太がいっていたことを思いだしました。
「きのこの森に行くのさ」
「わたしもいっしょに行っていいかい?」
「いいけど、きみにたすけてもらうことなんてないと思うよ」
あきらはそういいました。
スノーマンは頭をかきながら、すこしこまった顔をしました。
「そういわずにさ。わたしだって、きみのねがいごとをかなえてあげたいって、いつも思っていたんだぜ」
「なぜ、ぼくなのさ」
「きみがわたしを作ったんだろ」
「そりゃ、ぼくが作ったけどさ」
「じゃまはしないから、いっしょに行ってもいいだろ」
「もちろんいいとも。でも、雪だるまにおともしてもらうなんて、考えもしなかったなあ」
あきらは、にがわらいしながら、頭をかきました。
本当はとても心ぼそかったのです。
それからふたりはいっしょに、とっとこ山をのぼっていきました。
6
くらい森の中を歩いていくと、やがていずみにたどりつきました。
いずみのすいめんにはこおりがはっていました。あきらはそれを見て、ためいきをつきました。
こおりにはところどころにわれめができていて、そこからいずみの水がながれているのが見えます。
「魚がほしいんだけど、これじゃ魚をつるなんてとてもむりだな」
するとスノーマンは、エッヘンと大きなせきばらいをしていいました。
「むりなもんか。かれ木のえだを一本もってきてごらん」
あきらは足もとにあったかれ木のえだをスノーマンにわたしました。
スノーマンはかれ木のえだをこおりのわれめに入れると、しずかにかき回しました。
しばらくしてえだをひきぬいたら、こおりついた魚がえだの先に五ひきくっついていました。
「こんなもんでどうだい?」
スノーマンはたずねました。あきらは魚をひろいあつめながら答えました。
「これだけあれば、じゅうぶんさ。ありがとう、スノーマン」
それからふたりは森のいずみをぬけ、野原にたどりつきました。
あきらはそこで、ねつさましのやくそうをさがしださなければなりませんでした。
けれども、野原は雪でおおわれていて、とてもやくそうなんて見つかりそうもありません。
あきらはまたまたためいきをつきました。
そこでスノーマンがいいました。
「わるいけど、わたしの体をころがしてもらえないかな」
スノーマンは雪の上にあおむけになりました。
あきらはいわれたとおり、スノーマンの体をころがしてみました。
すると、スノーマンはころがりながら、野原の雪をじぶんの体にくっつけていきます。
スノーマンの体は、雪の上でころがるたびに、ひとまわりもふたまわりも大きくなっていきました。
スノーマンが小山ほどの大きさになると、野原の雪はすっかりなくなっていました。
あきらは草をかきわけ、あかねのねっこをいくつもほりだしました。
「スノーマン。やくそうがこんなにとれたよ」
あきらはうれしそうにいいました。
「おやくにたてて、わたしもうれしいよ」
スノーマンは大きくなったおなかをゆらしながら、またせきばらいをしました。
つづく
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